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# TRUST適用ガイド > 汎用ガイド | 全プロジェクト共通 | 横断的検証層 --- ## 概要 TRUSTは、AI時代の認知的検証フレームワークである。AI出力を鵜呑みにせず、本質を見抜く力を民主化する。 ``` ┌─────────────────────────────────────────────────────────────────┐ │ 「AIはすべてを美しく見せる。TRUSTは本物を見抜く力を与える。」 │ │ "AI makes everything look good. TRUST helps you see what's real." │ └─────────────────────────────────────────────────────────────────┘ ``` **位置づけ**: ``` Layer 1(OS層): ITF / USM / CEM / derivation / AAF │ ════════════════════════════════════════════════════════════ ║ TRUST(検証層 / Verification Layer) ║ ← ここ ║ すべてのフレームワーク出力を検証 ║ ════════════════════════════════════════════════════════════ │ Layer 2(パターン層): TAT / DDM / etc. ``` --- ## 1. 超えるべき3つのパターン ### 1.1 Polishing Trap(磨き上げの罠) **症状**: 深さがないまま「完成」と錯覚する ``` 【検出サイン】 - 美しく整った文書だが、核心が曖昧 - 「何となく良さそう」で判断が止まる - 質問されると答えに詰まる ``` **超え方**: Origin Question(起源の問い)を使う ``` 「この核心は、AIに触れる前から自分の中にあったか?」 → Yes: 本物の可能性が高い → No: 表面的な磨き上げの可能性 ``` --- ### 1.2 Sycophancy(サイコファンシー) **症状**: AIが「気持ちいいこと」を優先する ``` 【検出サイン】 - AIが常に同意・賞賛する - 批判的な視点が欠如 - 自分の考えがAIに強化されていく ``` **超え方**: Resistance Question(抵抗の問い)を使う ``` 「これは間違っている、と言われたらどう感じるか?」 → 動揺する: 確信が弱い可能性 → 冷静に反論できる: 本質を掴んでいる可能性 ``` --- ### 1.3 Cognitive Comfort Trap(認知的快適性の罠) **症状**: 批判的思考の機会が減少する ``` 【検出サイン】 - AIに丸投げする習慣 - 自分で考える時間が減少 - 違和感を感じても放置 ``` **超え方**: Execution Question(実行の問い)を使う ``` 「明日、最小単位で始められるか?」 → Yes: 具体性がある → No: 抽象的な空想の可能性 ``` --- ## 2. Evidence Pyramid(E1-E6) AI出力を含む全ての情報の「検証レベル」を評価する。 ``` ┌─────────────────────────────────────────────────────────────┐ │ E1 │ 複数環境で再現・実証 │ メタアナリシス級 │ ├────┼──────────────────────┼────────────────────────────┤ │ E2 │ 自己/自社環境で実証 │ 自社A/Bテスト級 │ ├────┼──────────────────────┼────────────────────────────┤ │ E3 │ 類似事例・他者経験 │ ケーススタディ級 │ ├────┼──────────────────────┼────────────────────────────┤ │ E4 │ 理論的妥当性 │ デザインパターン級 │ ├────┼──────────────────────┼────────────────────────────┤ │ E5 │ 経験・直感・専門家意見│ コンサル助言級 │ ├────┼──────────────────────┼────────────────────────────┤ │ E6 │ AI出力(未検証) │ ★スタート地点(TRUST独自) │ └────┴──────────────────────┴────────────────────────────┘ ``` **重要**: E1-E6は「情報の検証レベル」。Evolution Map (L1-L5.5)の「AI協働成熟度」とは別概念。 ### 2.1 昇格パス ``` E6(AI出力) │ ├─── E5へ昇格: 専門家レビューを受ける │ ├─── E4へ昇格: 理論的根拠を確認 │ ├─── E3へ昇格: 類似事例を見つける │ ├─── E2へ昇格: 自分で小さく検証 │ └─── E1へ昇格: 複数環境で再現 目標: 重要な判断ほど、高いEレベルで裏付ける ``` --- ## 3. 48時間ルール 重要な意思決定は、48時間寝かせてから判断する。 ``` 【適用条件】 - 不可逆的な決定 - 大きな投資(時間・金・人)を伴う - 方向性を決める決定 【手順】 1. AI支援で決定案を作成 2. 48時間放置 3. 48時間後に再確認 → 興奮が冷めた後も重要なら、それは本物 → 興奮が冷めて色褪せたら、再検討 ``` --- ## 3b. 検証モード(リスクに応じた段階選択) すべての判断に同じ深度の検証を適用するのは非現実的。リスクに応じて4段階を使い分ける。 ``` 【モード選択の3問】 1. この決定は可逆か?(可逆 → Light/Standard、不可逆 → Full/Cross) 2. 影響範囲は?(自分のみ → Light、チーム → Standard、組織 → Full/Cross) 3. 投資規模は?(小 → Light、中 → Standard、大 → Full、戦略 → Cross) ``` | Mode | Trigger | Actions | | ------------ | ------------------------ | ---------------------------------- | | **Light** | 日常判断・可逆的な決定 | Origin Questionのみ | | **Standard** | 通常の業務判断 | Core Questions 3問 + E1-E6判定 | | **Full** | 不可逆的・高コストの決定 | Standard + 48時間ルール + 文脈分離 | | **Cross** | 戦略的決定・組織方向性 | Full + 異なる立場からの再検証 | ``` 【具体例】 Light: Slackの返信、日常のコード変更 Standard: 新機能設計、技術選定 Full: 事業戦略、大規模リファクタリング Cross: 事業撤退/参入、組織理念改定 ``` --- ## 3c. 文脈分離(48時間ルールの補完) 48時間ルール(時間分離)だけでは、同じ文脈で冷静になるだけ。文脈を変えて再評価する。 ``` 【3つの分離軸】 場所分離: 物理的に異なる場所で再評価 → 環境依存バイアスを検出 役割分離: 異なる立場から再評価 → 役割固着バイアスを検出 相手分離: 異なる相手に説明してみる → 社会的バイアスを検出 【実践】 1. 現在の文脈(場所/役割/相手)と判断を記録 2. 文脈を1つ変えて同じ問いを再評価 3. 判断が変わるか記録 → 変わらない = 堅牢な判断 → 変わる = バイアスの可能性 → どの文脈がより正確か検討 ``` ``` 【48時間ルールとの組み合わせ(Full/Crossモード)】 Day 0: 判断を記録(文脈も記録) Day 1: 文脈分離を実施(場所 or 役割 or 相手を変える) Day 2: 時間分離後に再評価(48時間ルール) ``` --- ## 4. フレームワーク別の適用 TRUSTは全フレームワーク出力に適用可能。 | Framework | 適用ポイント | | -------------- | -------------------------------------- | | **ITF** | Q1-Q6の各出力にCore Questionsを適用 | | **USM** | 軸の発見・構造化結果をE1-E6で検証 | | **CEM** | 協働的創発の成果をCore Questionsで検証 | | **derivation** | 契約定義・導出結果をE1-E6で検証 | | **AAF** | 採用設計を48時間ルールで検証 | ### 4.1 ITF + TRUST の例 ``` ITF Q4: Validation(検証) │ └─── TRUST Core Questions を深い実装として使用 【実践】 1. ITF Q1-Q3 で探求 2. ITF Q4 で TRUST Core Questions を適用 3. E1-E6 で検証レベルを判定 4. 48時間ルールで重要決定を保護 5. ITF Q5-Q6 へ進む ``` --- ## 5. 実践チェックリスト ### 5.0 モード選択(最初に実施) ``` □ この決定は可逆か?不可逆か? □ 影響範囲は?(自分のみ / チーム / 組織全体) □ 投資規模は?(小 / 中 / 大 / 戦略的) □ → モード選択: Light / Standard / Full / Cross ``` ### 5.1 日常の判断時(Light モード) ``` □ このアイデアの核心は、AIに触れる前からあったか?(Origin) □ 批判されたら冷静に反論できるか?(Resistance) □ 明日、最小単位で始められるか?(Execution) ``` ### 5.2 重要な意思決定時(Full / Cross モード) ``` □ Core Questions 3つをすべて通過したか? □ Evidence Pyramidで何レベルか?(E?) □ E6のままで進めて良いか?昇格すべきか? □ 48時間ルールを適用すべき決定か? □ 48時間後にも重要と感じるか? □ 文脈分離: 場所/役割/相手を変えて再評価したか? □ 文脈を変えても判断は同じか?(変わるなら要注意) □ (Cross)異なる立場からの再検証を行ったか? ``` ### 5.3 AIとの協働時 ``` □ AIが同意しすぎていないか?(Sycophancy検出) □ 自分で考える時間を確保したか?(Cognitive Comfort Trap検出) □ 「完成した気分」になっていないか?(Polishing Trap検出) ``` --- ## 6. ペルソナ別の活用 ### 6.1 Creative(クリエイター) ``` 【痛み】AIが全てを美しく見せるので、本当の深さが分からない 【TRUSTの価値】 - Origin Question: 自分の創造性とAIの寄与を区別 - Polishing Trap検出: 表面的な美しさと本質的深さの判別 - E1-E6: 作品のオリジナリティ検証 ``` ### 6.2 Strategy(戦略家) ``` 【痛み】AIがYesマンになり、批判的検証が不足する 【TRUSTの価値】 - Resistance Question: 戦略の堅牢性テスト - Sycophancy検出: AIの同意に依存しない - 48時間ルール: 重要な戦略決定の保護 ``` ### 6.3 Technology(技術者) ``` 【痛み】AIに頼りすぎて、自分の学習が蓄積しない 【TRUSTの価値】 - Execution Question: 実装可能性の検証 - Cognitive Comfort Trap検出: 自分で考える習慣の維持 - E1-E6: 技術選定の検証レベル評価 ``` --- ## 7. mirrorでの活用 ### 7.1 統合フレームワークマップ ``` http://localhost:3000/foundation # FiveFrameworkIntegrationMap # TRUST検証層の可視化を含む ``` ### 7.2 プロジェクト設計時 ``` 1. ITF/USM/CEM で探求・構造化 2. TRUST で検証 3. 48時間ルールで重要決定を保護 4. derivation で契約化 5. 実装へ ``` ### 7.3 CLAUDE.md への記録 発見・学びを CLAUDE.md 学習ログに記録する際、E1-E6レベルを明記: ```markdown ### 2025-XX-XX: [学び] **Evidence Level**: E4(理論的妥当性)→ E2(自己環境で実証) **学び**: - ... **検証**: - Origin: Yes - この問題意識は以前からあった - Resistance: 反論に対して根拠を持って説明可能 - Execution: 明日から適用開始 ``` --- ## 8. 原則 ### 8.1 気づき、含んで、超える TRUSTは「敵と戦う」フレームワークではない。 ``` ×「AIの罠と戦う」 ○「パターンに気づき、含んで超える」 パターンは悪ではない。 気づかずにいることが問題。 ``` ### 8.2 North Starとの整合 TRUSTはSeehub Vision「分け隔てなく、友達だと気づく世界へ」と整合する。 ``` AIを敵視しない。 AIの特性を理解し、 人間とAIが共に本物を見抜く力を育てる。 ``` --- ## 参照 ### 内部参照 - フレームワーク クイックリファレンス - 五層品質モデル - AI Agent運用規約 ### 外部参照 - TRUST v1.0(本体) - Framework Integration Map - ITF v2.1 - TRUST実装 --- _気づき、含んで、超える_ _Notice, include, and transcend_